9月2日
前回の涸沢は消化不良だった。そこで、念願叶って今年再挑戦してみることにした。もちろん、奥穂や北穂の登頂が目的だ、欲張っているけど。
ただ、いつもながらいつ出発するかが問題だ。一応勤め人ということでもあり、最近の天候の不安定さには困惑する。
9月上旬にチャンスは訪れた。今年2度目となる迷走台風が、幸いに本州東方を北上することが確実視され、北方から高気圧が張り出してきていたのだ。
9月1日の金曜日は休養日に充てた。翌2日の未明に出る予定だったが、金曜日の18時に最後の買い物をして出発することにした。高速に乗ったのが19時。まだ眠気が来ていない間に大阪を通過しようと考えたのだ。これは、なかなか良い結果をもたらした。そんなに混むことなく、中間地点である黒丸PAに22時17分には到着した。涼しい中で、仮眠することができた。どこでも眠ることができる自身に感謝だ。4時間ほど眠ってから、再スタート。しかし、5時頃に眠気が襲ってきたので、再度仮眠。1時間寝てから出発した。6時半頃には飛騨清見を降りることになりそうだ。
明るくなっていたので、快調に進んで高山を通過し、アカンダナ駐車場に7時半に着いた。準備を整え、バス乗り場に向かう。上高地には9時に着いた。天気は最高に良い。結果的に快晴は3日間続いた。
荷物は12kgくらいだろうか。後になってみると、余分な荷物が多かったようで、サブザックにもいくつかの荷物を詰め込んで前側に掛けた。カウンターになっているかも知れない。とりあえず、今日は林道歩きなので問題はないだろう。
上高地から明神、徳沢、横尾と1時間刻みで歩いていく。最初のうちは快調だったが、途中から足の裏にマメができつつあるのを感じた。さらに悪いことには右足の踝が痛み出した。ピリッピリッという感じだ。林道歩きは、私には難しいということもあるが、とんでもないことに、登山靴の中敷きを忘れたことが原因だ。靴の中で足が不安定にずれてしまっていたのだ。
横尾の天幕場で、以前からねらっていた場所を確保し、昼間からのビールということにした。明るいうちに飲む酒はことほど美味しい。
軟弱者の私には、ここで3泊もいいかなと思いつつあったのは事実だ。
良い天気だけのことはあって、夜は冷えた。標高が1600mほどだったろうか、明け方の外気温は10℃だったようだ。テントの中は14℃。シュラフが羽毛ではあるが夏用のペラペラのもの(5℃となってはいるが)なので、用意していた羽毛ジャケットを着込んで寝ることでしのいだ。
18時にはすることもなくなったので眠るわけだが、不覚にもよく寝てしまった。しかしながら、20時・11時・3時と3回もトイレに起きてしまう爺なのだった。これは3日間とも続いた。しかし、満月近かったこともあって、前の2回は明るい夜景が楽しめたし、未明の1回は月が没し、それなりの星空を見ることができた。既に冬の星座が東方に見え、オリオン大星雲やアンドロメダ大星雲、二重星団などが肉眼で見ることができたのは嬉しかった。寒かったのだが…
9月3日
翌朝、3日は快晴。行けるところまで往ってみるか、だめなら戻ればいいと云うことで出発した。中敷き無しの登山靴だったので、靴下2枚はいて固めた。これは良かった。この日は踝の痛みが全く出なかった。足裏のマメへの対応は、百均で購入しておいた貼り付けシートを貼っておいた。これも功を奏してマメの悪化を防ぐことができた。
6時半に出発。いろいろうまくいって、1時間半で本谷橋。涸沢には11時前には到着した。もう少し早く到着すれば、北穂の往復を考えていたが、無理だった。
それでも、涼しい気候で汗もそんなにかかず、快調に到着できたのには我ながら嬉しかった。やはり9月の気候だね。嬉しかったついでに涸沢名物のおでんビールセットを頼んでしまった。緊縮予算だったので、おでん生ビールセットは避けた。これがとても美味しかったので、昼食は済んでしまったことになる。
前回来たときには、テントを張るところをそんなに考えず選んでしまったので、夜中のトイレから帰るときに、自分のテントを見失うことがあったので、大通り脇の確認しやすいところを選んだ。さらに、ゴツゴツした場所であるので、コンパネ板を借りることにした。これは500円なのだが、平らなことこの上なく、快適な寝床になったのは云うまでもない。テントの固定も前回の経験から、細引きや針金なども用意してあったので簡単に設営できた。
昨日もそうだったが、昼を終えてテントを張れば、本日ももうやることがない。そこで、涸沢をふらつけばいいのだが、その意欲はない。せいぜい、ちょっと高みにある涸沢小屋まで散歩することにした。上からの涸沢カールとテントの様子を見てみたかったことと、何らかのお土産に期待したのだ。
バンダナを1枚購入した。カールの様子は期待していたほどではなかった。もう少し上に登らないといけないのだ。
テントに戻ってからは、本当にまったりと空虚な、いやいや無我の境地に突入して過ごした。「暇」を感じることなく時間を過ごした。これっていったい何なんだろう。まさか、一生が終わる時というのは、こんな感じなのだろうか?
翌日は奥穂を行けるところまで登ってみよう! という計画ではあったが、涸沢小屋に上がった時の自分の様子を考えて、無理という判断にした。モチベーションも皆無になっていたし(^^;)
気温もどんどん下がって、最終的に外気温5℃、テント内7℃になったのだが、羽毛ジャケット・ズボン2枚・靴下2枚でも寒かったのだ。もう一晩この寒さには耐えられない。明日は、下山して徳沢のフカフカ草地にテント泊しよう〜! と安易に流れた。
この日の星空が最高だった。しかし、40年ほど前に夜を過ごした南アルプスの広河原での星空ほど見事だったことはなかったな。昔は、そんな星空が日本のあちこちで見られたのに。今では、テカポにでも行かないと見られないのだろうか。
9月4日
翌日は7時に涸沢を出発。ゆっくりと下る。順調に下る。くるぶしの違和感はない。多少足マメの再発がある感じだ。
本谷橋には8時15分。流れの中を撮影したが、イワナは見えなかった。
更に下って、横尾9時半到着。ここでもう一泊でも良かったが、明日の行程を考えると、徳澤まで行った方がいい。それに、フカフカ草原が待っている。横尾はトイレ休憩のみで通過する。
このトイレ休憩で恐ろしいことをしでかした。何気なく財布などを入れた大事なバッグを目の前の棚に置いて、ことを済ませた後にそのまま置き忘れてしまったのだ。しばらくして気が付いて飛び込んだ時には、別の人が用を足していたが、慌てていたので後ろから飛びついて驚かしてしまった。その人に対して、「ごめんなさい」
1時間ほど歩いて徳沢。ここでは、ソフトクリームが有名で、皆さん歩きながら賞味していたが我慢した。折角の減量チャンスなのだ(でも、ビールは良いことにしておいた)。
ここの幕営場はなかなかの広さで、大きな木もあり環境は良い。しかしどこにテントを張るかは検討する必要がある。今回は天気が良いので雷とか雨を考えなくとも良かったのだが、木の下では星が見にくい。冷えていることもあったので、夜露のことを考えると木の下に張った方がテントがぬれなくて翌朝の撤収に便利だ。
結局、そこまで思い至らぬうちに青空が開けた所に張ってしまった。陽ががっちりと照らしてくれるので、テントの中で昼寝をすることもできない。失敗した。さらには、翌朝夜露で濡れたテントのケアに時間を費やした。もっとも、いくらでも時間はあったのだが。
ただ、7時を過ぎて出発する頃には山が迫った徳沢でも日差しが出てきたので、この頃に片づけをしても良かったのかも知れない。
近くを流れる川がある。見ているだけでも癒される。しかし、イワナはいるかな? などと俗な考えが出てくる。
昼過ぎてまったりしているときに、TVでお馴染みの○○君が一人で歩いてきた。早速、多くの人に捕まって写真撮影会になっていた。有名になることは大変なことだ。自分の時間が無くなる。
暇なので少々散歩をする。誰も来なそうな川縁に出て笛など吹いてみる。アサギマダラがつきあってくれた?
この日も18時にはテントに入って寝てしまった。もちろん、20時・23時・4時と起きてトイレに行った。星はそれなりにきれいだった。
18時頃には、近くにテントを張った女学生のグループの会話が喧しかったが、20時にはみなさん静かで、恐らく私の鼾が響いていただけだっただろう。
9月5日
最終日は7時に徳沢を出発。明神で川向こうの穂高神社にお参りしたり、笛を吹いたりしてのんびり上高地へ向かった。
9時には着いたのだが、上高地は早、賑わっていた。ここはさっさと退散するとしてバスセンターに向かう。土産を買わねばならない。
ちょうど出発しようとするアカンダナ行きに乗ることができて、ラッキーであった。
平湯ではいつものように温泉にはいる。前回と同様「ひらゆの森」という温泉につかって身を清めた。
あとは、一路岡山を目指した。490kmを途中3回ほど休みを入れ、18時30分には自宅に着いた。
自分の体力なりに平地を歩くことができるように、山道でも身体に応じた歩き方をすればいいのだ! なんて強がっていたけれど、やはりそれなりに歩いていないと足裏の皮膚が強化されないのでマメなんぞができやすくなる。少々運動強度を上げると心拍数がすぐに上昇して普段通りになるのに時間がかかる。疲労が増えるとモチベーションも下がってくる。等々、普段からの運動が必要だということですね。わかりきっているのだけれど、なかなか実行できない体たらくだ。
しかし、もう山に登ることができるチャンスもそうないのだから、意識して運動するかな。来年は、涼しい9月の平日に小屋利用で岳沢→前穂→奥穂→涸沢→上高地という計画を実行しよう! さてどうなることかしらん?!