南アルプス 塩見岳 行


7月26日

 梅雨が明けて数日間。少々焦っていた。梅雨明けの好天はそう長続きしない。けれど,中国地方が梅雨明けしても長野は未だだったのだ。当たり前のことだが,焦るとうまいことにはならないのだ。それでも幸いなことに,後から知ったことだが,私が塩見を登ったその日に少なくとも東海地方は梅雨が明けたらしい。

 目覚めるとすぐに出発することにしていた。前日に朝食の用意はしておいた。4時発。大阪の町を通勤の混雑前に走り抜けることができた。途中渋滞もなく,9時過ぎには松川ICを降りる。出た道をまっすぐ天竜川の対岸を目指すように道なりに向かっていく。途中脇道に昼食を調達するコンビニを見つけたが,どうせ途中にあるだろうと一路登山口を目指す。これが失敗だった。食べるところや売店はあまりない。

 予め道をネットで調べていたので迷うことなく鳥倉林道を走り,10時45分最後の駐車場に着く。ここで,途中の地元の店でゲットしたカップラーメンを作って食べる。

 水もあるし,トイレもある。車は結構ある。その割には山にいる登山者の数は少なかったようにも思うが。

 ここから舗装されている林道歩き。終点間際に地道になり登山口に到着。ここにもトイレがある。途中何度か山水が流れているので利用できる。

12時8分出発

 しばらく谷筋ふうの樹林の中を登る。40分ほどで尾根に登りつく。ここを第1のコルとでもしようか。大きく北に向かいだして,相変わらずの樹林帯歩き。豊口山の山腹をトラバースしている。

 

13時32分豊口山コル(第2のコル)着

 何カ所か気分のいいコルがあって,ゆっくり休める。ここから2248mピークの北側をトラバースして,次のコルを目指す。

 下左が第3のコル。ここからもずっと尾根の北側をトラバースしていく。

 14時28分 水場到着。この水場は有り難い。下山時にはしっかり歯を磨いて美味しく呑んだ。もっとも,三伏峠で購入した市販品の天然水の方が美味だったが。

 しばらく行くと,ようやく塩川小屋からの道を合わせる。鳥倉林道よりも1時間よけいにかかるので,どうしても登山者は鳥倉林道を利用するのだろうな。しかし,かえって静かな山旅ができそうだ。

16時 三伏峠小屋着

 なんやかやで4時間かかってしまった。

 早速テント設営。霧にまとわりつかれた登りだったが,ここへ来て天気は回復してきた。塩見岳がよく見えてきた。しかし,遠いなあ。

7月26日

5時00分 出発

 早立ちの人々は4時前に出ていたようだが,ゆっくりと朝食を食べてから出発した。かつて,朝飯抜きで登り始めてハンガーノックになったからだ。昨日の峠への登りで体内中のエネルギー源は枯渇しているだろう。直ぐにエネルギーにならない腹回りの脂肪は一体いつ働くのだろう?

 右に荒川岳方面への道を分け,しばらくで三伏山。ここは展望がいいが,霧の中。太陽の直射日光に晒されないし,空気もしっとりして乾燥しないので有り難い。けれど,ずっとこのままでは,頂上に行くのも苦しくなる。

6時20分本谷山

 三伏山を緩やかに下り,お花畑を過ぎながら急登すると本谷山。ここでメール通信。安否と下界情報も入手しておく必要がある。

 本谷山からもグーンと下って,権右衛門山の南斜面をトラバースする。この道は水平道なので楽なことは楽。ようやく霧が晴れてきて塩見岳が見えてきた。大分近づいた。人が歩くのって,かなり素晴らしい。

 水は流れていないが権右衛門沢の源流らしい沢を渡ると,いよいよ塩見小屋目指して樹林の斜面を登る。緩やかで落ち着いた登りだ。登り詰め尾根に出たところで塩見新道と合流する。

 更に登ると絶景が広がってきた。北には間の岳と北岳,南には荒川三山。

8時33分塩見小屋着

 塩見小屋ではいろいろ飲物やゼリーと利用させてもらった。この小屋は規模が小さいので完全予約制だ。水を確保するのが難しいだろうが,場所は最高だ。いつか泊まってみたいものだ。
 ここからは,稜線上を進むので,景色は大いに楽しめる。右に左に名のある山々が連座する。

 先ず天狗岩の下まで登る。ここの南側を巻くが,その先からはのんびりはできない。写真では塩見岳の切り立った様子は分からないが,途中まで見える登山道の先が見えない。あの岩場の何処かを通っているのだろうが...

 落石注意の表示があるが,ツアー登山者がいたら危ないところだ。今回は前後に誰もいないので安心して登れる。途中の草原では6羽の子を連れた雷鳥親子を愛でることができた。

10時2分 塩見岳頂上

 塩見岳は2度楽しめる。登り詰めた頂上は三角点のある西峰。東峰はそれより高く狭い岩だ。ここに2時間留まった人がいた。羨ましい。塩見小屋に泊まれば十分楽しめる。

 頂上はどちらも絶景で,その間の道がまた楽しい。稜線散歩できる庭みたいなものだ。今回はビデオを撮ってきた。容量の関係で,MP4フォーマットです。見れる人は試してみて。

 午前中から雲は出ていたが,幸いに山々を隠すまでにはならなかった。富士山も頂上部分だけは姿を見せていた。赤石の先端や聖も見ることができたのは拾いものだった。

 東峰からみた西峰。姿としては東峰のほうが好きかな。頂上が広い分,落ち着くのは西峰。

10時35分 頂上発

 登る時に感じた険しさは,下る時にはあまり感じなかった。天狗岩をすり抜けて一路三伏峠を目指す。

 塩見小屋で充分休憩を取った。ここから戻るのに,かなり登りがあって(といっても急ではない)バテた。水の計算を間違えたのだ。

14時35分 テント着

 この後,早めに夕食を作った。腹心地良くなって18時にはシュラフに入って寝てしまった。寝入りばなに大雨が降ったのを辛うじて聞いている。テントのチェックもしないで,そのまま寝てしまった。夜中の0時に目が覚めた。外へ出てみると,雲ひとつない星空。残念なことに,昨晩もそうだったが,降るような星空ではなかったこと。

7月28日

 この日は朝から快晴だ。このまま下山するのはもったいないので,朝飯前に三伏山(「さんぷく」でなく「みふく」らしい)まで登った。10度を下回り,風も強いのでかなり寒い。その中を沢山の登山者が塩見岳を目指している。少なくとも4つのツアー団体を見た。今日私が登るのでなくて良かった。

 ここは眺めがいいので,パラソルでも開いて一日中のんびりしたいところだ。

 テント地に戻ってから朝食を作り,のんびり撤収した。

7時 下山開始

 朝の樹林帯は気分がいい。樹間から塩見岳が見える。これを最後にあとは樹林下り。

 登山口から三伏峠までを10分割して,こういう標識が貼られている。これは問題の5/10。何枚もあるのだ。これは一体時間なのか,距離なのか。ちなみに,ここに着いたのが7時57分。峠から1時間かかっている。登山口が8時48分だから,時間で5/10というわけではないな。

 気分のいいコル3ヶ所。下の林道で出会った登山者は,三伏峠周辺で遊ぶとか言っていたが,このコルでのんびりするのもいいなあ。

登山口 8時48分着

 下山用のバスが待っていたが,林道を歩かないなんてもったいない。実は野イチゴを調べる狙いがあったのだ。

 登る時に見つけたのだが,林道の両サイドにはイチゴがあちこちにあったのだ。右のものは普通のイチゴそのままだ。左のイチゴはノウゴウイチゴか? 思わず口に入っていたが,味は良くなかった?!

 この後,山水を楽しんだり,ゼフィルスの縄張り争いを見たり(ビデオに撮れなかった!)と,楽しいひとときだった。

 途中伊那バスに追い抜かれた。ゲート前には車が溢れていた。

 この後,松川IC近くの温泉に入り,一路岡山に向けて車中の人となった。

雑記

(1)山では携帯を使わない人がいるが,自分の安否情報は出しておいた方がいいのではないだろうか。高齢者の方々はメール契約をしていない人も多いが,契約して損はないと思う。南アルプスでは,下界の集落を見ることができるピークではメール送受信ができることが多い。こちらからは無理にしても,あちらからは入ってくる。携帯のパワーが弱いからだろうか。
 なお,通話は違和感たっぷりで周囲の人に迷惑だし,パワーがないので通じないことが多い。

(2)キャンプ指定地は小屋では得られない雰囲気がウリだ。それが静けさであったり,のびのびできる空間であったりだ。ところが,集団であれば喧しいことが多いし,単独行者であれば人寂しいのか話しに花を咲かせて喧しいことが多い。もう少し,マナーを守りたいものだ。

(3)登山前から右膝がピリピリしていたので,計画をずらそうか考えていたのだが,結果的には何ともなかった。これは,おそらくは膝テープの効果だろう。スポーツ用のガッチリしたものも持っていってはいたが,逆に違和感を覚えて,この膝テープにした。塩見を往復した後にそのまま使って下山後はがしたのだが,多少かぶれはあったものの,寝ている時の煩わしさはなかった。「膝かんたん」とかいうものだったと思うが,2枚入って700円程度のものなので,一度おためしあれ。

なお,この効果は人によって違うことを申し添えておきます。