9月5日 Fri.
今年は天候が不順で7月中旬に計画していた山行がずれにずれ込んで、9月の頭になってしまった。もちろん、天候だけでなく家庭行事や仕事関係も不自由さの中にはあったし、自身の体調が整っていない、「夏バテ」というのも大きかった。
そんなこともあり、幕営行の予定が小屋泊まり行になってしまった。ザックの重さが軽くなったことはいうまでもない。また、このことは自身の行動にも大きいアドバンスを与えたことも否めない。楽だ。
前夜19時半に出発。夕食を軽めにしていたし、出発日は休みだったのでゆっくり準備ができた上に昼寝もしたので、体調は良かった。高速道路も混雑しておらず、順調に多賀SAまで来て、仮眠をとった。
9月6日 Sat.
1回の仮眠で体調十分。一気に飛騨清見、高山、平湯と走った。平湯には6時43分に着く。バスは6時50分発に乗車して上高地には7時半には着いた。天気は良好。焼岳や吊り尾根が綺麗に見える。
槍沢ロッジまでが本日の行程なので、ゆっくり進む。荷物が軽いこともあって気分はいい。昨年はさっと通り過ぎた河童橋を渡ってみた。
順調に1時間刻みほどで、明神・徳沢・横尾と進む。10時43分横尾着。ここで、昼食にラーメンを注文。
晴れてはいるが、9月の気候と基本的に林道なので日陰であり体力の消耗は少ない。年寄りの身には有り難い。一ノ俣を越えたところで笛を吹く。
左を流れる梓川はきれいな川だ。そこかしこにイワナが潜みそうなポイントがある。昆虫でも投げ込んでみたい衝動に駆られる。バシャッときたら興奮ものだ。
槍沢ロッジには13時に到着。今日はここまで。この調子であれば、ババ平でのテント泊も十分な行程だ。ただ、9月なので気温が下がり持っているシュラフは保温不足ということと天候が安定しないこと、何しろ本人の体力が不足していることが、それを実現させない。だから小屋泊まりだ。
ここでも、密かに笛を吹いた。ここから槍ヶ岳が見える。雪崩があって邪魔していた木々が無くなったということだ。単眼鏡も設置してあったのでコリメート法で撮影してみた。登っている人が見える。
夕食の時には食堂が満杯(ざっと数えて80名ほど)だったのだが、寝るときのスペースはゆったりしていた。倍の160名ほどであれば布団1枚に一人くらいと思えた。
夕食は美味しかった。
19時頃には布団に潜り込んだのだが、21時に目が覚めたときには雨が降っていた。あんなに晴れていたのに.....このまま降り続いたら明日は帰るかなと考えながら再び眠りに落ちた。その後、翌日3時まで寝ていた。しかしまだ、雨が降っていた。岡山では大嵐だったそうだ。
9月7日 Sun.
朝、雨は小降りとなり、そのうち止んでしまった。ロッジの玄関先にある衛星電話の側ではdocomoがつながったので、Iモードで天気を調べると、回復傾向になっていたので、行けるところまで行くことにした。5時40分に出発。
6時18分ババ平。トイレはそれなりだがなかなかいい場所だ。地面が他よりもわずかだが凸になっているので、乾燥している。もう来ないかもしれないが、テント泊まりしてみたいところだ。
ここから先は開けた河原を進むことになる。陽が出ていれば直射日光に晒されて暑いだろうが、今回は雲に覆われているので助かる。6時55分水俣乗越分岐。この辺りから梓川は大きく西に曲がることになる。大曲りだ。
途中雪渓がある。9月になったので、雪解けが進み歩く距離は50mほど。越えたあたりからクロマメノキが実をつけているのを発見した。立ち止まりながらつまんで楽しむ。在来のブルーベリーだ。
天狗原分岐8時9分。だんだん雲が動いてきた。晴れる雰囲気だ。大粒の木苺もあるだが、残念ながら苦くて美味しくない。動物のフンにはたくさんの木苺の種が入ってはいた。彼らには重要な食物なのだろう。
水場9時3分。上部に小屋があるが、大丈夫だろうということで飲んでみる。美味しい。雲はますます晴れてきた。
9時28分ころにようやく彼方に槍ヶ岳が見えてきた。ここからが長いといろんな雑誌にあった。このころからは青空が見えてきて暑くなる。
槍ヶ岳に初めて登った播隆上人が泊まったとされる岩小屋だ。5回ほど登ったらしいが、その最後の5回目には、この岩小屋に50日間ほどこもったそうだ。50日間の食料はどうしたのだろう。
殺生ヒュッテ分岐10時40分。もう十分にヘロヘロだ。ここから槍ヶ岳山荘までは40分だったと思うが、歩いては立ち止まることを繰り返したので、後続者にはどんどん追い越され、結局倍の時間をかけてしまった。最後の数百mのジグザグ登りでは、単独行のテント泊女性と声をかけながら登った。彼女もへばっていた。しかし、彼女はサッサと穂先に向かっていった。流石にパワフルだ。
12時3分槍の肩に到着した。さて、登れるかな? 呼吸を整えながら槍の穂先を見つめる。沢山の人が登っていくので、ルートを確認する。
お腹が空いたので、小屋に入ってパンがあるかを確認する。ここのパンはこの小屋のキッチン槍で焼いているそうで、人気だ。クロワッサンと○○(名前を忘れた)を選択し、コーヒーも注文。この組み合わせは最高だった。特に久しぶりに飲んだコーヒーは美味しかった。豆の種類を聞いておくんだった。
腹が落ち着いたので、意を決して.....というほどではないが、フラッと出発することにした。一昨年は登れなかったし、もう二度とここには来ないだろうから、最後のチャンスと思った。遠目に見ると垂直なようでも、実際に登ってみるとそうでもないのが大方だ。
あれこれ考えず、スタスタとルートに向かう。幸いに前後に人はいない。ゆっくり登れるぞ。
13時10分登攀開始。思った通り登りやすい。高所恐怖症の私でも、ゾワゾワ感覚が全くなかった。鎖場や梯子などがあって、最後の2段の梯子を登り切ったらそこが頂上だ。13時34分着。
ただ、頂上は大きな岩がゴロゴロしていて広くはない。数人しかいなかったので良かったが、団体さんがいたら大変なことだ。頂上ではゾワゾワ感が出た。バランスもとりにくいし、気持ちいいものではない。槍ヶ岳山荘を見下ろした時はそうでもなかったが。
小屋を見下ろしたときに団体さんが登ってきたので、13時40分下山開始。基本的には上り下りのルートは別なのだが、合流するところや、登りルートを上にする部分もある。石を落されたら危ういし、人でも落ちてきたら嫌な感じだ。
下山中にハーネスを付けてセルフビレイをしながら下山しているグループに追いついてしまった。斜面に取り付けてある鎖にかけたり外したりして下るのを待つことになるので時間がかかる。それでも、逆にゆっくり景色を楽しむことができた。急ぐ旅ではない。下りの方が怖いのだが、それほどでもなかった。14時11分下山完了。万歳だ。
槍ヶ岳山荘に泊まろうと思っていたが、どんどん人が集まってきたし、明日は上高地まで戻らねばいけないので、体力温存のために少し下の殺生ヒュッテを目指した。これは正解だった。宿泊者は私を含めて10名。今日もゆったりの布団だった。空気が薄かったが、笛を吹いてみた。長いC管を持参したが、短めの笛の方が良い気がする。音が出ない。
槍沢ロッジでは、団体さんの談笑が大きく賑やかすぎたので閉口したが、殺生ヒュッテでは静かな夜が過ごせた。ただ、1000mほど標高が高いので寒かった。外気温は4度まで下がっていた。
小屋の中はストーブが焚かれていたので14度ほどあった。それでも寒かったし、やることもなかったので、19時には布団に潜った。なんと、布団が新素材のようで、とても暖かかったこともありゆっくり休めた。鼾をかいて他の人に迷惑をかけたかもしれないけれど.....
この晩も21時と3時に起きた。残念なことに霧がかかっていたので星空撮影はできなかった。気温が4度しかない外には出たくなかったし。
ところが4時に起きたときに、ガラス越しに明るい星が出ているのに気がつき、準備をして外に出た。多少薄雲がかかっていたが天頂と西空と槍ヶ岳シルエットを撮影できた。
9月8日 Mon.
朝食は6時。終了後トイレに行って6時25分には下山開始。登りは全くだめだが、下りには自信がある。一気に転がるだけだから。途中の雪渓では実際に転げた(^^;)
朝の槍が朱に染まるところを撮りたかったが、逃した。代わりに富士山を見ることができた。このとき以外は雲に遮られて見えなくなっていた。
快適な宿泊をありがとう! 殺生ヒュッテに別れを告げる。
右の写真が雪渓だ。50m以上あるな。
ババ平前の河原でも笛を吹いてみた。良くない。キャンプ場8時30分着。ここから槍ヶ岳にピストンしているのだろうね。
槍沢ロッジ9時。槍見河原では、槍の穂先が見えた。横尾10時27分。お決まりののんびりタイム。
横尾のテントサイトも魅力だ。涸沢に向かうときは、ここに泊まってゆっくりしてもいい。
徳沢11時55分。明神12時53分。上高地13時50分とほぼ休みを入れて1時間刻み。上高地と横尾の間は、身体が元気なときは平坦に思うのだが、帰りの付かれた身には、その凸凹感が、特に登りが辛く思うのだった。
頑張ったご褒美に、徳沢のソフトクリーム。
上高地の小川が綺麗だったので、水中を撮影してみた。驚くほどの透明度だ。イワナが写らなかったけど.....こんなに透明な水中は初めてだ。
バス14時30分で平湯に戻る。狙っていた「ひらゆの湯」で露天風呂に入る。沢山の湯船があって楽しめたし、身体がそれなりに清められた...ような...気がした。
風呂15時28分。高山17時。自宅22時30分着。今年が終わった。
さて来年のことだが、女房が立山に行きたいと言ってくれれば、車で行こうかな。